2024.12.18

デジタル音声広告が切り拓くDEI──対談「広告と言葉のチカラ」 オトナル代表取締役 八木太亮×アドライブ代表取締役 遠藤隆一郎


(左から)株式会社オトナル代表取締役 八木太亮さん、株式会社アドライブ代表取締役 遠藤隆一郎さん、C-stationエグゼクティブプロデューサー 長崎亘宏

アフターコロナに伴う経済正常化の追い風もあり、2023年の日本の総広告費は過去最高の7兆3,167億円を記録(出典:電通「2023年 日本の広告費」)。うちインターネット広告費は3兆3,330億円(前年比107.8%)と、市場全体の成長を支える存在となっています。

一方で、デジタル音声広告の普及においては、世界と大きな隔たりがあるのが現状です。しかし、生活者のメデイア可処分時間の奪い合いが起きている中において、視覚情報に頼らない音声メディアは、〝ながら時間"や〝耳時間"へのアプローチが可能であり、今後の成長が期待されている分野とも言えます。

そこで今回は、音声メディア・音声広告の可能性、重要なファクターとなる「言葉のチカラ」について、音声×マーケティング活用のリーディングカンパニーである株式会社オトナル代表取締役の八木太亮さん、名古屋市を拠点とする株式会社アドライブ代表取締役の遠藤隆一郎さんをお迎えして語り合っていただきました。対談のファシリテーターは、C-stationエグゼクティブプロデューサーの長崎亘宏が務めます。

この対談は下記から音声でもお聞きいただけます。

生活を変えるチカラを秘めた音声メディアの可能性

長崎 今日は「広告と言葉のチカラ」をテーマにしたC-stationスペシャル対談として、株式会社アドライブ代表取締役の遠藤隆一郎さんと、株式会社オトナル代表取締役の八木太亮さんをお招きしました。まずは自己紹介をお願いしたいのですが、遠藤さんからよろしいでしょうか。

遠藤 はい。株式会社アドライブの代表取締役を務めさせていただいております、遠藤隆一郎といいます。私どもは名古屋を中心に全国の企業さま、行政さまを対象にプロモーション活動のお手伝いやイベント、またテレビ、ラジオ、雑誌、新聞、Webなどの広告活動を業務内容としておりまして、2024年で設立から33年目を迎えます。

私は53歳になりますが、48歳のときに遺伝性の難病により視力を失いました。しかし、失明という状況の中、音声や音楽に多くの気づきをいただき、現在は社長業と並行しながら「言葉のチカラ」をテーマに企業や教育機関などで講演活動も行わせていただいております。今日はよろしくお願いします。

株式会社アドライブ代表取締役 遠藤隆一郎さん

八木 株式会社オトナル代表取締役の八木太亮と申します。デジタル音声広告は、近年アメリカで高い成長率を維持する広告サービスとなっています。日本で言うならばradikoやポッドキャストなどインターネットで聴ける音声メディアに広告を配信する仕組み、またその販売が私たちオトナルの事業となります。

よく、「この動画の時代に、なぜ音声広告を始めたのか?」と聞かれるのですが、私自身は音声に多くの価値を感じており、5年ほど前からインターネットの音声広告事業をスタートさせました。今日は音声の価値についてもお話できればと思いますので、よろしくお願いいたします。

株式会社オトナル代表取締役 八木太亮さん

エモーショナルな「言葉」が人の心を揺さぶる

長崎 現在、日本の広告市場の約4割をデジタル広告が占めている状況です。それによりコンテンツもプロが作る物だけではなく、ユーザーがコンテンツメーカーになれる文化も生まれています。そんな状況下において、プロとして広告を手掛けられているお二人が特に力を入れて取り組んでいること、考えていることを教えていただけますか。

講談社 ライツ・メディアビジネス本部 局次長 兼 メディアプラットフォーム部 部長/C-stationエグゼクティブプロデューサー 長崎亘宏

遠藤 もともと弊社はイベント事業からスタートしたこともあり、力を入れている事業ではありますが、やはり2020年のコロナ禍以降、リアルイベントが中止になったり延期が相次いだりしました。ところが、2023年の後半からは非常に依頼が多いのがリアルイベントなんです。

コンサートやライブが増えたように、リアルな企業のPRイベントや行政のイベントがとても増えています。お客さまもリアルイベントの復活を望んでいますし、一般のエンドユーザーもリアルイベントを望んでいる。結局、デジタルでは賄いきれないFace to Faceのコミュニケーションはリアルイベントでしか実現できませんので、そういった意味ではリアルイベントの盛り上がりをすごく感じていますし、メディアとイベントのミックスが、今後より望まれていくのではないかと思っています。

長崎 八木さんは、どのようにお考えですか?

八木 遠藤さんがおっしゃったように、コロナ禍を経たからこそ「リアルが良かったね」ということに気づいている企業が多いと感じています。オンラインではできないことが、オンラインだけになったことで気づいたと言いますか。デジタル偏重社会になって、デジタルが「正」であると推し進めてきた結果、コロナ禍によって「リアルがなければダメだ」ということに気づいた人がたくさんいるのだろうと思っています。

長崎 オトナルとして注力していく部分に関してはいかがですか?

八木 オトナルは設立以来、インターネットの音声広告を国内に広げることを最上位のミッションに掲げていて、その想いはまったくブレていません。現在も音声広告の拡大を推し進めています。

このミッションを達成するには二方向ありまして、広告主さまにインターネットの音声広告を普及させていくことがまずひとつ。一方で、日本にはインターネットの音成広告を出稿できるメディアがあまり多くないという現状がありますので、音声広告を普及させるためにメディアを増やしていくという仕事の二方向で動いています。

イメージとしては風上から風下までに関わっている形なのですが、2024年になってから広告主さまが音声広告の必要性に気づき始めていると感じています。

今の広告は「アテンション・エコノミー」の世界。ひたすら視覚でどれだけ注目を集めるかが重要視されていますよね。SNSもそうですが、刺激的なものを作り込んで、いかに人々の目を引くか。そうするとユーザーの目の奪い合いをやり合うような世界になるわけですが、そのとき、実は「耳は空いている」。そこに音声広告が入り込む余地があるわけです。それに気づいてくれている広告主さまが増えている実感がありますし、今後の可能性に手応えも感じています。

長崎 広告主の意識が変わってきたということですが、どのようなことから変化を感じますか?

八木 2023年から、ナショナル・クライアントと呼ばれる企業がポッドキャストで音声番組を始めたりとか、YouTubeコンテンツを転用して音声メディアのポッドキャストを始めたりという動きもあります。また、これまで動画コンテンツを作っていた人たちが、音声コンテンツの制作を手がける動きも出てきていますね。

遠藤 八木さんのお話を聞いていて私が感じるのは、テレビに広告出稿しているクライアントは、映像寄りのクリエイティブ発想しかないということ。お二人にもイメージしていただきたいのですが、目をつぶってテレビCMを聴いていると、スポンサーはどこなのか、何の広告なのかわからないものが多いと思いませんか?

長崎 今言われて気づきましたが、確かにそうですね。

遠藤 私の場合は常に目を閉じている状態と同じなので、テレビから流れるCMも音で聞き分けるしかないんです。「これ、何のCM?」と家族に聞かなければわからないものが多い。同じ広告に携わっている人間としては、それが残念でならないんですよ。

八木 いま遠藤さんが音を意識していないCMが多いとおっしゃいましたが、私も同感なんです。
昭和の時代はラジオとテレビの両方で使えるCMの作り方をしていたと思うので、テレビを見ていなくても音声で何の広告かがわかるCMが多かった。ところがインターネットの広告はスマホで見るわけで、ユーザーは基本的に音声をオフにしているはずなんです。だからスマホ用の動画広告は見た目と言うか、絵しかないんです。

実際、スマホで見る動画広告にはBGMが流れているだけで、ナレーションなどの音が入っていないものもあるんですよ。それはインターネット時代の広告が、視覚に最適化されているからだと思うんです。インターネット広告の登場によって、音が軽んじられているなと感じています。それが2024年の現在地のように思います。

長崎 先進国の中でも、まだテレビの影響が強いのが日本の特徴ですが、今のテレビ広告は視覚的な効果が追求されるあまり、「音声」という要素が退化しているのかもしれないですね。場合によってはスマホ動画とパッケージで考えられているので、仕事の効率化という意味からも音声オフでも通じるCMが作られているのかなと。

八木 そうですね。たとえば、電車に乗っている時はスマホの音を出せないわけですから、音がなくても伝わるように作っているのだと思います。

長崎 それは、そもそもの広告の意味、「広く世の中に知らせる」という視点で考えると、「日本の広告は退化」しているとも言えそうです。

遠藤 お二人がおっしゃるように、昨今、音声は軽んじられているように思います。しかし、家庭やオフィス、車の中もそうですが、手が離せないとか目を向けられない場面がたくさんある中で、広告を届けるチャンスを逃しているのではないかという気がします。私みたいな例は特殊だと思いますが、それでも私のような人も世の中には何十万人といるわけで。そういったハンディキャップのある人も含め、投げられた球を受け取れない人たちがいっぱいいるのは、もったいない気がしますね。

実は音声活用と親和性が高い、新聞社と出版社

長崎 八木さんにお伺いしたいのですが、先ほど音声広告の普及活動とともに、音声広告メディアを増やす仕事もされているとおっしゃっていましたが、具体的にどのような活動をされているのですか?

八木 ふたつありまして。ひとつは音声メディア自体を増やすという方法。ふたつ目はちょっと抽象的な表現になりますが、既にある音声メディアに対して、広告枠を広告技術によってつなぎこむという方法です。

ひとつ目は音声メディアを作るという話なので、そもそも音がないんですよ。音がないものを音にするのがひとつ目の仕事で、これは非常に興味深いものがあります。具体的に言うと、新聞社や出版社のコンテンツを音声メディアにするのも、そのひとつです。活字メディアには結構、音声向きのコンテンツがあるんですよ。

長崎 弊社も今、絵本のように聞くオーディオブックですとか、文芸作品の音声化を進めていますが、もっと他にも可能性があるということですか。

八木 はい。アメリカではポッドキャスト市場が急成長しているのですが、そのトップパブリッシャーには新聞社がいるんです。新聞社は取材を通じて大量の一次情報を持っているんですね。現場の生の声とか、事件現場の雑踏音も録ることができる。それを基にした番組がすごく人気があるんですよ。活字だけではなく、取材した一次情報から音声コンテンツを作ることができるという意味では、新聞社や出版社のポテンシャルはかなり高いと考えています。

ただ、表現ひとつとっても心の揺さぶられ方が違うので、それはまさに「言葉のチカラ」ですよね。やはり、音声コンテンツのキーとなるのは人間だったりするので、当然ながら喋る人間が重要になります。

「言葉のチカラ」は時に人を生かし、時にナイフにもなる

長崎 今、八木さんから「言葉のチカラ」という言葉が出ました。遠藤さんは通訳を介してですが、アメリカで講演をされた際にスタンディングオベーションが起きたほど、聴衆を感動させましたよね。まさに「言葉のチカラ」によるものだと思います。

八木 アメリカのどちらで講演されたのですか?

遠藤 テネシー州です。日本法人のアメリカ工場30周年記念の式典に呼んでいただきまして、そこで300人の前で「言葉のチカラ」をテーマにお話をさせていただいたんです。正直、どこまで日本語の奥深さが伝わるか不安があったのですが。

たとえば、私が妻にかけられて助けてもらった言葉に「止まない雨はない」、「死ぬこと以外、かすり傷」というものがあるのですけれど、「止まない雨はない」を直訳されてしまうと「当たり前じゃん」となってしまうので。でも、その会社の社長が日本人で「大丈夫です。私が責任持って通訳します」と言ってくださったので引き受けたところ、どうやらアメリカの方にも私の想いが伝わったようでした。

長崎 そのような実体験もされている遠藤さんが考える「言葉のチカラ」とは?

遠藤 私は今から5年前、48歳の時に視力を失いました。どん底に突き落とされた時に、家族や友人、知人がかけてくれた言葉に生かされて、私は今ここにいます。ただ、言葉のチカラというのは励ましにもなればナイフのようにもなると思うんです。よく講演でも話すのですが、余命半年の人であるとか、治る兆しのない病に冒された人に「頑張れ」はナイフのような言葉だと。だけど「大丈夫だよ。きっと大丈夫」という言葉に救われることもあるんです。だから、言葉のチカラ、日本語は素晴らしいなと思うんですよ。

長崎 私は遠藤さんご自身の言葉のチカラにも凄みを感じています。ずいぶん昔から存じ上げていますが、目がご不自由になってから以降、非常にエモーショナルかつ心に染み入るように感じています。これは本業である広告会社の仕事にも生かされるのではないでしょうか。プレゼンテーションにも説得力が増すのではないかと。

遠藤 いえいえ、むしろ私よりも社員のほうが上手くなりました。なぜなら、本番の前にまず目の見えない私に説明をするわけですが、資料を見ることのできない私が説明によって企画を理解できなければ、他の人も理解できないわけですよ。だから、社員たちは私に事細かな説明をしているうちに上手くなっていきましたね。

この記事をお読みになる企業の方々にお伝えしたいことがあるのですが、上司の方は目をつぶって部下の説明を聞いていただきたい。目をつぶって聞いていて理解できない企画ならやめたほうがいい。目をつぶって聞いていてもわかる企画だったなら、ぜひ褒めてあげていただきたいですね。

長崎 いま遠藤さんがおっしゃったお話は、コミュニケーションの本質的なことですよね。私もあらためなければと思いました。

遠藤 私は視力を失ってから、その人が本気で話しているかとか、言葉の間や息遣い、声のトーンなどから、その人の気持ちがすごくわかるようになりました。それぐらい音声って耳で拾った時に心を揺さぶられもしますし、逆に揺さぶらなさすぎる時もあります。非常に大事なものですよね。

音声だけのほうが心を揺り動かすという研究結果も

八木 視覚を失ってしまったからこそ気づけることがあるわけですよね。同様のことが私の使う事例にもあるのですが、完全に一致しているのですごく興味深いです。海外では、「音のある動画」と「音だけのもの」を比較した研究が結構行われているんですね。

キング牧師の「I Have a Dream」の一節で知られる有名な演説がありますが、これを映像+音声で見せた場合と、音声だけで聞かせた場合の脳波の調査によると、音声だけのほうが圧倒的に脳波スコアは高くなる結果が出ています。つまり、音声だけのほうが心を揺り動かしているということなんです。音声コンテンツや音声メディアの価値を伝える際に、この話をよく使うのですけれど、視覚情報のない遠藤さんのお話が、完全に一致しているので自信になりました。

長崎 遠藤さんは実感として、声や音には力があると理解されているわけですよね。八木さんは音声メディアや音声広告に携わられていますが、コンテンツ密度であるとか、コンテンツの質量の高さは、どうやって証明できるものなのでしょうか?

八木 ラジオの場合、広さより深さだと言ったりしますよね。つまり、リーチを考えるとテレビやWebメディアのほうが強いんですけれども、1人当たりが熱狂的になっていく力、エンゲージメントやファン度合いはラジオや音声コンテンツが高いと言われています。その計測にはリスナーの反応を分析したりしますが、なかなか証明が難しい部分もあります。

音声広告は、視覚に依存しない「体感広告」

長崎 八木さんは最近、資生堂ジャパンの「ファンデ美容液」の音声広告を作られましたよね。日本を代表する化粧品メーカーである同社が音声広告にチャレンジしたことは、とても興味深いのですが、どんな工夫をされたのか教えていただけますか?

八木 私は音声広告もコンテンツもそうなのですが、「体験」が重要なメディアだと考えています。活字は「見る」とか「読む」ですよね。一方、音声広告は「感じる」とか「浴びる」に近いかなと思っているんです。なので、動画などの視覚メディアよりも、人間が体で浴びることのできるものだということを意識して制作しました。

長崎 体感広告」というイメージでしょうか?

八木 そうですね。なので、本当に愛されるものを作る必要がある。嫌われないようにすると言いますか。昔のサウンド・ブランディングとかをちゃんとやっていた人たちは、愛される音を作っていたと思うんですね。それを踏まえて今回の音声CMは、"感じてもらえる(体感)"を大切に考えて作りました。

資生堂ジャパン"ファンデ美容液"プロジェクトも着目した、「耳」の可能性

長崎 今回のCMは音声広告のためだけに開発したものとのことですが、なぜ資生堂ジャパンはファンデ美容液を音声広告で展開しようとしたのか、その背景を教えてください。

八木 日本ではポッドキャストや音声メディアを聞いている人の87%が「ながら聞き」しているという調査報告があるんです。人が音声メディアに触れている時は、歩いているかもしれませんし、料理を作っていたり、ランニングをしていたりするかもしれない。必ず何かしていると。それでこれは資生堂ジャパンさんが登壇でもおっしゃっていることですが、同様に化粧をする時は、目は鏡を見て、手は化粧品を持って動かしているはずだと。では、どこが使われていないのか。それは耳であると。

長崎 なるほど。確かにそうかもしれませんね。

八木 ええ。化粧品って視覚の情報が大切に思われますが、実は音とすごく相性が良いことに気づいていただき、今回の音声CM制作に至りました。先ほども言いましたが、体験を大事にしたいので、「この商品は良いですよ」と言ってもダメだと。愛されるCMでなければダメだという想いで、かなりコンテンツに馴染むように作っています。

今回はデジタル広告で配信したので、1ユーザーあたり最低でも3回以上接触するよう設計していたのですが、3回接触する頃には、BGMで流れている歌を生活者が思わず歌い始めてしまう、という現象も起きていたようです。

長崎 曲の作詞・作曲は、どなたが担当されたのですか?

八木 これもかなり異例なのですけれども、資生堂ジャパンのかたが作られたんです。

長崎 ご自身で作成されたのですか。すごいですね。それだけに熱量の高さや重みを感じますね。こういう音声広告がもっと増えたら世の中が楽しくなりますね。

遠藤 楽しいですし、商品のことがちゃんと伝わりますよね。本来は、こういうふうにあるべきだと思うんですよ。テレビ、ラジオであろうがインターネット広告であろうが音声メディアであろうが。ところが、その大切なものが置き去りになってしまっていたのが、最近のテレビCMだったのではないでしょうか。

「言葉のチカラ」が音声の価値を左右する

長崎 今日、お二人からお話を伺って、音声広告、音声メディアは高いポテンシャルを持つとともに、こんなにも力があることに気付かされました。今後、広告や広告業界全体がDEIを意識した方向に進むと思うんですね。それは決して、ネガティブな消去法ではなく、ポジティブな意味で、DEIを選択し、中心に据えていくことになるのではないかと感じました。
また今回、広告の本質、ユーザーの心に届くコンテンツだからこそ、音声広告は効果が高いのだと思いました。

八木 やはり、インターネット広告は視覚に振り切られすぎている世界なんですよ。五感に訴えることは難しいのですが、それを目指していかないとDEIを実現することはできないと思いますね。

遠藤 そうですね。結局、インターネット広告は視覚に訴えるものですから、パッと飛びつくけれど、他にテンションの高いものがあったら、すぐにそっちへ行ってしまう。飽きられるのも早いと思うんです。

でも、八木さんのお話にあったように、音声広告はファン度合いが高いので、1回好きになったら、また聞く。それを繰り返して心が揺さぶられていくのだと思うんです。インターネット広告とは、そういうところの差が大きくありますよね。

各メディアには、それぞれ適性があります。それを意識した広告を作ることが大切であり、広告を見た消費者が「感じる」ことが心揺さぶる消費行動につながるのではないかと思います。その意味においては、八木さんのお話から音声メディア、音声広告にとても可能性を感じることができました。

八木 ありがとうございます。私も遠藤さんの「言葉のチカラ」に、とても感銘を受けましたし、あらためて音声の価値を実感することができました。

長崎 なお、今回の対談は、オトナルさんのお力をお借りして音声でも聞くことができます。本日はありがとうございました。

撮影/村田克己 文/小林保 取材・コーディネート/長崎亘宏(講談社C-station)

長崎亘宏 エグゼクティブプロデューサー

C-stationグループを運営するメディアプラットフォーム部 部長。ライツ・メディアビジネス本部 局次長。 広告会社でのメディアプランニング職を経て、2006年より、広告商品開発やイベント事業に従事。雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」設立に関わったほか、17年より、Advertising Week Asia アドバイザリーカウンシルメンバーとして活動。21年より、JIAA理事に就任。

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