2024.12.23

雑誌DXプラットフォームMDAMからデータ分析する、"雑誌の価値"とは?|雑誌データを起点とした、「non-no」「ViVi」「CanCam」編集者によるZ世代論<前編>

non-no, 集英社, ViVi, 講談社, CanCam, 小学館, Z世代論, MDAM, エムダム

雑誌・書籍の編集制作支援機能とアセットマネジメント機能を兼ね備えた、総合誌面制作プラットフォーム「MDAM(エムダム)」。集英社、講談社、小学館の3社は、MDAMを基盤とした新しいサービスを創出するために2022年に戦略委員会を設置し、活動を続けてきました。

その活動の一環として2024年12月6日(金)、Z世代向けに情報を発信し続ける3メディア「non-no」(集英社)、「ViVi」(講談社)、「CanCam」(小学館)の編集者が一堂に会する、無料のウェビナーを開催。MDAMに蓄積されたデータの分析を通して見えてきた雑誌のポテンシャルや、Z世代マーケティング攻略のヒントを、データサイエンティストを交えて語り合いました。

C-stationでは、本ウェビナーの模様を前後編に分けてお届け。前編では、女性誌各誌をMDAMで分析することで見えてきた「各誌の特徴」や「女性誌の価値」、「雑誌の力」をマーケティングに活かすヒントなどをお伝えします。

<登壇者>

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トレンド「発信源」あり、「お墨付き」を与える存在── MDAMで見る雑誌の役割

ファシリテーターを務めたのは、博報堂DYメディアパートナーズの安島博之氏。はじめに安島氏から、「MDAM」についての説明がありました。

MDAMは、出版社発で作られた、雑誌・書籍の編集制作支援機能とアセットマネジメントを兼ね備えた総合誌面制作プラットフォームのこと。編集者やデザイナー、印刷会社などがMDAMにアクセスし、入稿や校正等の作業が可能な「雑誌DXの基盤」といもいえるシステムです。2017年に集英社で開発され、現在は契約ベースで出版社863媒体が導入しています。

MDAMには誌面や画像、テキストデータが格納されるため、雑誌ごとにさまざまなデータが取得可能。コンテンツビジネスの基盤としても期待されています。

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2023年には、KODANSHAtechと博報堂テクノロジーズが、MDAMのポテンシャルを把握するため、データ分析をスタート。安島氏からは、MDAMに蓄積された美容誌3誌のテキストデータ、約3年分を分析した結果が紹介されました。

一例として挙げたのは、「幸せホルモン」と「純欲メイク」という美容誌に登場するキーワード。これらの言葉を、MDAMデータとX (旧Twitter) のツイートデータを掛け合わせて時系列で分析し、どのテーマがいつ盛り上がっていたかを分析した結果が示されました。

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安島「『幸せホルモン』はMDAMでトレンドのスパイクが起こり、その後SNSへ波及しました。一方『純欲メイク』は、SNSで流行していたものをMDAMがフォローする形で、トレンドが持続していることがわかりました。この分析結果から、雑誌がトレンドの発信源となるだけでなく、世の中のトレンドにお墨付きを与える役割を果たしていることが、データを通じて可視化されたと実感しています」

MDAMデータ分析 女性誌6誌分析から見えた、各誌の特徴と世代的な違い

2024年には、女性誌全般の分析を実施。博報堂テクノロジーズの樋口建氏、KODANSHAtechの長尾 洋一郎氏から、分析結果の報告と解説が行われました。

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【調査概要】
■分析対象誌 
・Z世代向け雑誌:「ViVi」、「non-no」、「CanCam」
・ミレニアル世代向け雑誌:「CLASSY.」(光文社刊)、「BAILA」(集英社刊)、「Oggi」(小学館刊)
調査期間  
2020年8月号~2024年9月号
■調査目的  
・Z世代をメイン読者に持つ3誌を分析し、Z世代像を捉える
・ミレニアル世代をメイン読者に持つ3誌との比較により、世代的な特徴を浮き彫りにする

メタ情報分析 文字数、フォントサイズ、使用フォントの傾向を読み解く

はじめに紹介されたのは「メタ情報」の分析結果です。メタ情報とは、企画内容ではなく、レイアウトやフォントなどに着目した情報のこと。樋口氏からは、分析結果から見えた各誌の「文字数」「フォントサイズ」「使用フォント」の特徴が語られました。

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樋口 「文字数Z世代と比較してレニアル世代の3の方が全体的に多めフォントサイズに注目するとZ世代向けの3誌では特大フォントが目立という特徴が見られました

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樋口 「使用フォント注目すると、各誌で頻繁に使われているフォントが異なことが分かりました。ミレニアル世代向け3誌では、スタイリッシュで洗練された印象や信頼性、専門性が強調されたフォントが使用。一方Z世代向け3誌では、柔らかさや活気、モダンで若々しい印象を与えるフォントが使用される傾向が見て取れます

品詞ランキング ― 頻出ワードから見る、各誌の特徴

続いて報告されたのは、「品詞ランキング」。出現回数だけでなく、フォントサイズや他誌との出現回数の差にも着目して分析したデータが示されました。

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樋口 「名詞を見ると、ミレニアム3誌では『30代』『ウェルビーング』『私たち○○派』といった、ライフスタイルや生き方に関連するような名詞が上位に来ていました。一方でZ世代3誌は『デニム』『ヘア』『眉』のような具体的な体のパーツやアイテムに関連する名詞が上位に来ていたのが特徴です」

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樋口 続いて形容詞です。ミレニアル3誌は心地よい』『ふさわしい』『程よい』など、ある種今の自分にった理想の姿を形容するようなワードが上位に来ていますZ世代3誌、3とも1位可愛いランクインただし、可愛いの中でも色っぽい甘い』『大人っぽいのような可愛いのニュアンス違いの形容詞上位に来ていことも大きな特徴です」

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樋口 「副詞形容詞と同様の傾向が見られました。ミレニアム世代向け3誌では、『今の自分に合った理想の姿』を表現する副詞、例えば『すっきり』『ゆったり』『きちんと』といったものが多く見受けられました。一方、Z世代向け誌では、どう可愛いかを形容する副詞が上位にランクインしています。さらに、若い読者層を対象にしているZ世代誌だからこそ『これから』『初めて』といった、ライフスタイルの変化に関連した副詞が上位に出てきている点も特徴的です

トレンドワード ― 世代別・ターゲットによって異なる"キーワード"

最後の分析結果は、「トレンドワード」について。2024年の前後で、全単語の出現回数を比較し、アップトレンドの単語を抽出した結果が報告されました。

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樋口 「ミレニアル世代向けの3誌では、『カスハラ』『フッ軽』『現代短歌』といったワードが上位に登場。社会問題や社会的ブーム、生活者像を反映したワードが多く見られました。『現代短歌』は、Instagramで流行した『#短歌フォト』や大河ドラマの影響もあり、若い世代の間で短歌が再評価されている様子が浮かび上がりました。また、『損益』『決算』といったワードは、近年の投資ブームに関連し、こうしたテーマが取り上げられていることが分かりました

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樋口 「一方Z世代3誌は、芸能人の名前やコンテンツ名が多く登場していました。例えば、韓国のボーイズグループ・TWS(トゥアス)のメンバーや、日本のガールズグループ・ME:I(ミーアイ)のメンバーといった話題の芸能人が上位に挙がり、『恋煩いのエリー』『バジーノイズ』『からかい上手の高木さん』など映画やドラマ作品名も目立ちました。また、流行のファッションアイテムも多く登場しています」

分析結果 ―「雑誌制作における感覚値が可視化。効果的な要素を把握できるように」

各誌の特徴がより明確となった、今回の分析結果。これに対して長尾氏は「雑誌の制作過程で自然にこうしたデータが溜まるようになったことが、これまでとは異なる大きな変化」と、述べました。

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長尾 「『Z世代誌のフォントが大きい』というデータを見て『狙ってフォントを大きくしているから、そうしたデータが出た』と考えると、つまらない情報のように聞こえるかもしれません。しかし、ここで重要なのはMDAMにデザイン素材写真などのデータが積み上がってきたからこそ、データ分析ができるようになったということです。

僕は過去に『週刊現代』で編集をしていたことがあるのですが、赤いロゴと青いロゴを使った場合どちらが売れるのか、どれぐらいのフォントサイズが適切なのかは、感覚値や経験値に頼るしかありませんでした。しかし今後はデータを活用すること、どの要素が最も効果的分かるようになる。データを継続的に見ていくことで、その変化も捉えることができるはずです。また、MDAMのような横断的なプラットフォームがあれば、『雑誌に接触している人々』についての情報を、他誌と比較しながらフラットに捉えることも可能となります。まずは、こうしたデータが取得できるようになったこと自体が、大きな変化だといえるでしょう」

MDAMデータ分析② 分析から見る女性誌の役割と、マーケティングへの活用方法

長らく「世代」を切り取り、読者に向き合った企画を届けてきた女性誌。しかし、ここで樋口氏から消齢化社会というキーワードと共に、1つの問題提起がなされました。

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樋口 「『消齢化社会』というのは、年齢による生活者の価値観や嗜好の違いが小さくなる社会のことです。消齢化社会により、生活者は複雑化。デモグラの情報だけで『世代』で切り分けるのは難しく、どうアプローチしていいかわからないといったマーケティング課題が生まれてきていますこのような時代のなかで、これからの女性の役割は何か、マーケティング活用するならどのようなアプローチ方法があるのかを、MDAMのデータを通して可視化したいと考えました」

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【調査概要】
■分析対象誌 
・Z世代向け雑誌:「ViVi」、「non-no」、「CanCam」
・ミレニアル世代向け雑誌:「CLASSY.」(光文社刊)、「BAILA」(集英社刊)、「Oggi」(小学館刊)
■調査期間  
2020年8月号~2024年9月号
■調査方法・目的
1次調査:世代のライフスタイルを浮き彫りにするキーワード候補をMDAMで調査。約50ワードの候補の中から、今回は「筋トレ」、「お酒」、「投資」の3つのワードをピックアップ。共起語分析により、各誌でその3単語がどのような文脈で使われていたかを捉え、特徴や違いを把握する。
※本稿では一例として「筋トレ」の調査結果を紹介
2次調査:Xのユーザープロフィールを AI技術を用いてクラスター分類。3つのワードとXのデータを掛け合わせ、各誌と親和性の高いクラスターを見つける

調査ワード筋トレ」から見る、女性誌とSNSクラスターの意外な共通項

調査キーワードの1つは「筋トレ」。「筋トレ」の出現頻度を時系列で見ると、年始や春にスパイクする傾向にあると樋口氏。「生活の区切りのタイミングで、筋トレのモチベーションが高まることがデータから確認できた」と、調査結果を伝えました。

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樋口「まずは、6誌全体で『筋トレ』がどのような文脈で使われているのかをMDAMから分析(共起語分析)しました。結果、『自分』『思う』『見る』『最近』といった共起語が多く、自分のスタイルへの不満や最近の体型変化への関心を持っている様子がうかがえました」

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続いて6誌を比較してみたところ、次の特徴が明らかになったと樋口氏。各誌違う文脈で「筋トレ」について語られていることがわかりました。

CanCam:食生活の文脈が中心。「飲む」「ごはん」「無理をせず」などライト層に寄り添った内容が多い。
ViVi:「目標」「モデル」「我慢」など、ストイックな姿勢が強調される語り口。
non-no/BAILA:「続ける」「習慣」など、継続をサポートする文脈で読者に寄り添うテーマが目立つ。

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2次分析では、X(旧Twitter)で「筋トレ」について投稿しているユーザーのプロフィール文をクラスタリング。その結果、「投資・副業」「母・育児」「アニメ・ゲーム好き」など、9つのクラスターに分けることができたといいます。

樋口 「Xで各クラスターがどのようワードと一緒に『筋トレ』の内容をポストしているのかを調べ、各誌のMDAMにおける共起語分析結果を照らし合わせると、例えば、食事等を通じて健康的な体を目指す『CanCam』と『育児クラスターと意外な共通項が見えてきました」

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樋口 「その他にも、目標に向けてストイックにという文脈で筋トレを取り上げているViViは、投資副業』『筋トレダイエット』クラスターと。継続性を重視する『non-no』や『BAILA』とは、『アイドル好き』『アニメ・ゲーム好き』クラスターとの親和性の高さを見ることができました」

分析結果 ― 雑誌の強み=「届けたい生活者に対して、最適なアプローチを提示できる」

「『お酒』『投資』についても同様に、共起語分析、Xクラスター比較を行うと、雑誌読者とSNSクラスターに意外な共通項があることが見えてきた」と樋口氏。こうした調査データについて長尾氏は、「各誌が"我々が何者なのか"を把握するだけでなくクライアントへの説明材料にもなりえる」と語ります。

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長尾 「各雑誌に関連するSNSクラスターがあると聞けば、『まあ、そうだよね』と思う方もいるかもしれません。しかし、ここで重要なのは、このデータがクライアントに対しての説明材料になり得るという点です。雑誌の編集部門は、クライアントに対し『我々は何者であるか』を説明し、広告を出稿するとどのような効果が得られるのかを伝えなければなりません。

雑誌が『この層をターゲットとしている』というシンプルな説明をしているなか、SNSマーケティングの世界は、膨大なデータを元にした分析が可能で、確度も高い。『雑誌はSNSに敵わない』という諦念が生まれがちでした。

しかし、今回のような分析データを用いることで、雑誌自身の強みを的確に説明することが可能になります。具体的には、『我々の雑誌にもこのようなクラスターが存在し、SNSマーケティングにおいても関連性の高いクラスターと結びついている』ということを示すことができるようになったのです。ネット上の膨大なデータにも引けを取らない"独自の強み"を明確化すること。この分析の意義は、まさにそこにあるのです。次のステップとしては、この分析データをいかに有益に活用し、雑誌の価値をさらに高めていくかを考えることだと思っています」

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最後に、今回のデータ分析によって見えてきた「雑誌の強み」について、樋口氏から説明がありました。

樋口 「6誌それぞれで、読者に合わせた言葉選びや編集の工夫、さらには取り上げるトレンドの違いが見られました。また、『筋トレ』といったライフスタイル関連のワードを切り口に分析した結果、各誌が親和性の高いSNS上のユーザーグループとリンクしていることも明らかになりました。こうした調査結果から、雑誌は届けたい生活者像に対して、最適なアプローチを提示できるメディアである』といえると思います」

雑誌の価値をマーケティングに活用していくには?

MDAMによる分析から見えてきた「雑誌の強み」。では、「雑誌の強み」をマーケティングにどのように活用していけばよいのでしょうか。安島氏は、改めて今も昔も変わらない「雑誌が持つ力」をまとめ、「雑誌の力とMDAMのデータと掛け合わることで、ビジネスに新しい価値をもたらすことができる」と言及。実績を交えながら「雑誌の新しい活用方法」のヒントを紹介しました。

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雑誌のトレンド力×MDAM分析で、「マーケティング上流工程を支援

ユースケースの1つとして安島氏は、雑誌が持つ「トレンドを生み出す力」とMDAMの分析データを掛け合わせることでマーケティングの上流工程の示唆獲得につながる」と提案。商品開発やローンチキャンペーン、リブランディングなどの上流工程でも「雑誌の力」を役立てることができると語りました。

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実例として安島氏は、スキンケアブランド・クラランス株式会社との事例を紹介。

安島 「全社を挙げたマスターブランドのリブランディングに際し、ワークショップを実施されたのですが、そこでMDAMのデータ分析を活用いただきました。マーケターが普段感じている世の中の動き仮説を可視化すること、非常に興味深い示唆を得られたと評価いただきました」

今後、MDAMデータ分析を誰でも簡単にできるダッシュボードのローンチも構想しているといいます。

こうしたMDAMを起点としたサポートがある一方、出版社や編集部はすでに企業のマーケティング支援に取り組んでいます。平本氏は、人気コスメブランドのリニューアル企画を紹介。「若年層へのアプローチについて相談を受け、言葉の選定や戦略面で協力した」と語りました。さらにViViでは、地方自治体の集客施策サポートも行ったといいます。

平本 「20代~50代という普段とは異なるターゲット層ではありましたが、SNS運用におけるViViのテクニックをお伝えさせていただきました。ファッション・ビューティー以外の分野にもViViの知見を活かすことができた貴重な経験となりました」

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小泉氏からは『non-no』と株式会社 東京デリカのコラボレーションで生まれた「スーツケース」の制作プロジェクトが紹介されました。

小泉 「『non-no』の主な読者ターゲットは、大学生。東京デリカ様との取り組みでは、『non-no』の現役大学生組織である『non-no大学生エディターズ』のメンバーが開発に参加しています。ボディの色やパーツの形状、『こんな巾着がほしい』『ヘアアイロンを熱いまま収納できるポーチがあったら嬉しい』といった具体的なアイデアを提案し、その声をもとにオリジナルのスーツケースを発売しました。大学生やZ世代のインサイトが形となったこの事例は売り上げにも好影響。『またコラボしたい』というお声をいただくこともでき、『non-no』としても非常に有意義なプロジェクトとなりました」

雑誌のコンテンツ力×MDAMアーカイブで、「お客様とのエンゲージを深める接点を構築」

2つめのユースケースは、雑誌のコンテンツ力とMDAMのアーカイブに注目。クライアントのオウンドメディア、SNSアカウント、販促ツール、コミュニティなど、「お客様とのエンゲージを深める接点の構築・維持に雑誌のコンテンツが活用できるのではないか、と安島氏。各誌の事例がいくつか紹介されました。

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小泉氏は、3年目となる青山商事株式会社non-noの取り組みをピックアップ。スーツの選び方や着こなしなどを紹介する「Book in Book」の制作やWEB展開だけでなく、企業側が全国の高校に配布するリーフレットを制作など、広がりを見せた事例について紹介しました。

小泉 「リーフレットは店頭でも利用され、店頭スタッフから『リーフレットがあるから提案しやすい』という声もいただいています。『non-no』は2025年に54年を迎えることもあり、親世代にも浸透している媒体です。長年培ってきた安心感と信頼性があるからこそ、自然と手に取ってもらえる形でご提案できたのだと、嬉しく思っています」

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高橋氏は、株式会社マッシュライフラボと『CanCam』の事例を紹介。『CanCam』の人気企画であるデート特集を軸に同企業が展開するアパレルブランド「SNIDELとのコラボ動画を制作したといいます。

高橋 「制作した動画はSNSだけでなく、『CanCam』のWEBサイトで展開。シーンやワクワク感がリアルに伝わるコンテンツとして高く評価されクライアントのオウンドメディアやSNSにも、この素材を活用したコンテンツがアップされました。多くのタッチポイントを通し、アイテムへの親近感や関心が自然に高めることができたと感じています」

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各編集部から紹介された、タイアップの事例。「編集部が作るクオリティの高いタイアップコンテンツはマーケティングに大きな効果をもたらすものの、量産が難しいという課題もある」と、安島氏。

「新しいコンテンツをどんどん追加していかねばならないコンテンツマーケティングには、MDAMのアーカイブが有効です。なかでも我々が注目してるのは、ニュースや課題解決記事などの編集記事です。MDAMのアーカイブコンテンツはまとまったボリュームがあるため、クライアントのオウンドメディアにも活用できる可能性があると考えています」と提案し、マーケティングにおける雑誌の活用事例についての説明を締めくくりました。

後編では、いよいよZ世代3誌の編集部が「Z世代」、そしてSNS運用などについて大激論した模様をお伝えします。
<後編に続く>

協力・資料提供/集英社、博報堂DYメディアパートナーズ 取材・文/室井美優(Playce) 編集・コーディネート/川崎耕司(C-station)

川崎耕司 チーフエディター・コーディネーター

C-station責任者。C-stationグループの、広告会社・広告主向け情報サイト「AD STATION」担当。

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